近視の基本的なおはなし。

今日は晴れ渡り、夏のような気候です。コロナ自粛期間から今もなお、テレワークやオンライン会議、オンライン授業が多く行われています。大人も子供も家に閉じこもりタブレットやテレビ、本を読んだりする時間がとても長くなったと思います。うちの子はもう3か月も自宅でオンライン授業を受けています!早く友達に会いたいと思います。しかし、外出できるようになっても、オンラインで済むものに気が付いてしまったものは そのままオンライン化してゆくことも考えられます。

眼にはどんな影響があるでしょうか。やはり、ドライアイ・眼精疲労・老眼の進行や、特に子供の近視進行は深刻になるのではないかと思っています。

現に眼精疲労の患者さんは多くなっています。例年ですとこの時期には学校の眼科検診の青紙を持って受診されるお子さんが多い時期ですが、学校検診が延期になっているのでこれから夏から秋にかけて、お子さんの視力相談が増えてくると思っています。

近視とは目の大きさ(長さ)で決まります。眼軸長といいますが、それが大きくなればなるほど近視は強くなりますが やはり身体の成長と共に眼軸長は伸びてしまいやすいです。身長の伸びは嬉しいものですが、眼軸長の伸びは嬉しくないですね。

では眼軸長が伸びすぎると(つまり近視が強くなりすぎると)将来的にどうして良くないかというのを簡単な図を示してみますね。f:id:mari1128riri:20200615115919j:plain

眼球の断面図です。目の奥には網膜、脈略膜、黄斑部、そして視神経と視機能にとてもとても重要な役割を果たす器官がこれだけ沢山あります。眼軸長が伸びていくと、それらの大切な器官も引き延ばされてしまい損傷が起こります。ゴム風船をパンパンに膨らませた状態を想像してみてください。

眼軸が伸びいわゆる「強度近視」という状態になると、網膜や脈略膜が伸びきって異常を起こします。眼底出血や脈略膜委縮、網膜剥離などの病気を引き起こし、物を見る一番大切な黄斑部はゆがみ、視力低下(ここでの視力低下は眼鏡をかけても視力がでないこと)を起こします。そして、視神経が弱ると緑内障になりやすいです。

 

近視は防ぐことはできないと言われていました。ところが近年、近視の進行を予防していく研究が沢山行われ どうしたらどんどん進む近視の進行を少しでも引き留められるかということが分かってきています。そうした予防をすることで「強度近視」になるのを防げば、将来的な眼の病気を防ぐことも可能ですよね。

現在可能な近視進行を抑制する方法を挙げてみます。

1.低濃度アトロピン

通常1%のアトロピン点眼を100倍に薄めて点眼するという方法です。
副作用を最小限にして安全に、なおかつ十分な近視進行抑制効果が得られることが数多く報告されています。米国眼科学会(AAO)では、これまでの研究において、未治療群の小児と比べ0.01%アトロピン点眼薬投与群では近視の進行を約60%抑制する効果も明らかになっています。

次のグラフは低濃度のアトロピンを点眼した結果です。

効果が大きく、なおかつ簡単に始められ副作用なども認められないので、当院では低濃度アトロピン点眼の処方を積極的に行っております。

f:id:mari1128riri:20200615124914j:plain

2.バイオレットライト

つまり太陽光の下でたくさん遊んでね、って私は診療の時にお話しを良くするんですがバイオレットライトとは、太陽光に含まれる波長360~400mm(紫外線とブルーライトの間)の光です。外で過ごす時間を1日2時間以上とることが、近視抑制につながることが分かっています。1日2時間、現代の子供たちには難しいですかね。タブレットやゲームをやりすぎないようにと先生から厳しく子供に言ってください!と親御さんによく言われます。でもゲームもYoutubeも面白いですし自粛ムードでどうしようもなかったと思います。確かに過剰な細かい作業は良くないのですが、屋外で少しでも遊べるように外遊びが楽しくなるような工夫をしてみると良いかもしれません。

3.オルソケラトロジー

オルソケラトロジーは角膜矯正をして裸眼生活が送れる上に近視の進行を強く抑制します。オルソケラトロジーについては長くなりますので別の記事に挙げて書きます。ブログカテゴリーの「オルソ」のところに随時ブログを投稿していきますね。

4.クロセチン

クロセチンはクチナシサフランに含まれる成分で、抗酸化力に優れた成分のサプリメントです。こちらが近視の進行を抑制するのが分かってきたので当院でもどのサプリメントを取り入れようか目下悩み中です。続けやすいお値段でなおかつ良いものをご用意したいと思います。市販でもクロセチンは出ていますので調べてみてくださいね。

5.6多焦点コンタクトや眼鏡

累進屈折力レンズ眼鏡(レンズ中心から下方に向かうにつれて連続的に度数を変化させたレンズで、通常老眼の方が使っています)によって近くを見るときの調節を軽減させ、網膜の中心部における焦点ボケを防ぐことで眼軸の延長を抑制する方法です。国内外で多くの研究が行われました。

学童期において累進屈折力レンズ眼鏡は、近視の進行を抑制(通常の眼鏡やコンタクトレンズ比で平均10~20%の抑制効果)することが判りました。

当院には最初からオルソケラトロジーを目的にご来院される方も多いため、多焦点コンタクトや眼鏡に流れるお子さんが少ないですが調節(近くを見ようと頑張る力のこと)を軽減させるのは目の疲れにもとても効果的なことで目の負担を減らせます。こちらは大人の眼精疲労にも効果があるでしょう。

私自身も強い近視です。自分が子供の頃にこんな近視進行抑制の方法があったらやりたかったと思います。